2009
↓つづきからどうぞ~。
☆
「ぷはぁ~~~……やっと一日目終わった……」
「ほんまやなぁ……みゆき、どやった?」
「うーん、びみょー。ねえ、ファミレス寄って明日の試験対策一緒にやろうよ」
「それ、ナイスやな! せやったら、その前に商店街の広場寄っていかへん?」
「商店街の広場? バーゲン?」
「ちゃうちゃう。今日、七夕やん?」
「うん」
「広場のおっきな笹、誰でも願い事結べるんやて」
「へえ、そうなんだ。なんか楽しそう! みんなも誘ってみようよ」
☆
「こどもの頃って短冊になんて書いた?」
「私は『おひめさま』って書いた」
「結花、可愛い!」
「うちは『けえきやさん』と『おようふくやさん』や」
「なんか、はるひっぽい! あかりは?」
「『ママ』って書いたよ。 ママみたいな女の人になりたかったんだと思う。みゆきちゃんは?」
「私はねー『ピンク』!」
「「「ピンクー???」」」
「ほら、変身して戦うプリティ☆ムーンってテレビでやってたでしょー? あれの真ん中の子になりたかったの!」
「「「「へー」」」」
「ひゃっ!」
いきなり背後から声が聞えてビックリした。
針谷と佐伯、それに志波と真咲先輩まで???
いつの間に?
なぜここに?
「オレはバイト先に用があって、たまたま通った。別に覗こうと思ったわけじゃねぇからなっ!」
「俺は必要な物を買いに来ただけ。そしたら、針谷に捕まって、面白そうだから覗いてみようぜって無理矢理引っ張られた」
「さ、佐伯! てんめぇ~~~っっっ!!!」
「オレは、配達の途中。 そしたら、楽しそうにしてんの見えたから、何してんのかなーと思ってな。勝己は?」
「スポーツショップ、行く途中だった」
☆
結局男子も流れで短冊に書くことになって。
一番目をキラキラさせてるのは針谷のような気がする。
きっとメジャーデビューとか書くんだろうな。
「針谷はこどもだからな」
「言えてる」
「おまえ、なんて書くんだ?」
「ん? んー…………あ、ねえねえ、志波はこどもの頃なんて書いたの?」
「オレ? 野球のこと、だな」
「『イチロー』とか『ホームラン』とか?」
「まあ、そんなとこだ」
「じゃあ、今年も野球のこと?」
「……おまえは? 部活のことなのか?」
「ううん……えっと、じゃあ、書いたらコッソリ見せてあげる」
「これ、です」
私が書いた短冊。
『ずっと一緒 M』
口に出して言うのはちょっと恥ずかしくてなかなか正面から出せない言葉。
でも、七夕という特別な日だから見せちゃってもいいなぁって思った。
「ずっと……?」
「『誰とだ?』とか聞かないでよ?」
「……誰と、だ?」
「う……わ、わかるでしょ?」
「はっきり言わなきゃわかんねぇ」
「意地悪」
「……言ってほしい」
「もう…………志波と、です」
まるでいたずらっ子。
自分だってこどもっぽいじゃん。
針谷のことなんて言えないんだから。
でも、そんな風に嬉しそうな柔らかい笑顔を見ちゃったら、怒る気にもならない。
優しい色の瞳、その目をちょっとだけ細めて、私を見つめる。
「ペン、貸せ」
「うん」
「『ずっと一緒 M』…………」
私の短冊をボソッと読んだあと、志波はその後ろに2文字付け足した。
『&K』